| 第二章 水の都に住む魔女の試練
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「レティル、大丈夫か?」
白銀の毛に覆われた顔。額に走る斜めの傷。白い大きな耳が不安そうに垂れていて、青い瞳を揺らしレティルの顔を覗き込むウィルト。
ベッドに横たわったまま、レティルはわずかに笑みを浮かべて手を伸ばし撫でてやる。
「うん、大丈夫。ごめんね、心配かけて」
「ん……」
青い瞳を細めてウィルトはそれを受けている。
水の精霊であり、名もなき小さなトゥル湖岸の村に住む魔女ウォアの家でレティルは熱を出して無理やりベッドに寝かしつけられた。
上の階では傷を負ったガイが休んでいる。
ウォアの試練に、混乱した挙句に魔法力を暴走させてしまった。そのままだったらおそらく自分は命を落としていただろうと思うそれを、自らの身体を犠牲にして止めてくれたのはガイだった。
自分が傷つける事もいとわずに、その両腕で受け止めて。
その代償にガイは深いダメージと傷を負い、レティルの身体を抱きしめていた彼はそのままずり落ちる様に倒れた。
ウォアはそんなレティルたちを一度回復するようにと、神殿からこの彼女の家に魔法で運んだのだ。
しばらくはガイの傍に付いていると言い張ったレティルだが、やはり魔法力を暴走させてしまったため、体調を崩して熱を出していた。
そうして今、レティルは彼女が用意してくれた一階のベッドに身体を横たえている。
「熱、高そうだな。少し眠ったほうがいいよ、レティル」
触れた手が扱ったのか、ウィルトは心配そうに目を揺らせた。
「うん、でもあんまり眠たくないんだ」
体力を戻すためにも眠った方がいいのは判っているのだが、レティルは眠る気にはなれなかった。
目を閉じて、そこに浮かぶものを観たくなかった。闇に浮かぶあの光景が再び見えそうだったから。
あれはウォアが見せた幻だと、今はわかっているけれど、それでもやはり、自分の中にある記憶は確かで、頭を少し過ぎるだけで背中に冷たいものが流れる。
ここ最近は思い出すことも少なくなっていたのに。
「眠くなくても寝ろ、バカ」
「え?」
突然、自分とウィルト以外の声がしてレティルは目を丸くした、ウィルトも同じ様に目を丸くし瞬かせる。
レティルとウィルトは顔を見合わせると、その視線を声の方に向けた。
するとそこに立っていたのは金色の肩ほどある髪を下ろし、布の服姿で深緑の瞳を向けているガイだ。
「ガイ?」
「よ、ご両人」
驚く二人をよそにガイは飄々と言い、片手を上げてゆっくりとした足取りで近づいてきた。
「何だよ、変な顔しやがって。俺は幽霊か」
「そ、そうじゃないだろ!」
呑気なガイの言葉に真っ先に反応したのはウィルトだ。
「お前、起きてちゃだめだろ! そっちこそ寝てろよバカ!」
そんな吼えるように叫ぶウィルトに苦笑を浮かべて、ガイは頭を撫でてやる。
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